読書感想文 『ハインの足枷』 吉田ばに(著)
事故で両親を亡くした少年ハインは、ドイツから祖母のいる日本に渡ってきた。豪奢だが陰気な館には、異形の女がいた。ハインはその女に追いかけられるが……
冒頭、髪を振り乱した女に追いかけられるというオカルトチックな始まりから、中盤はボーイミーツガールになって、終盤はミステリになるといったように目まぐるしくストーリーは展開していきます。ただ、少年ハインのこころを中心に据えた構成のため、読み味はゆったりしていて、ハラハラドキドキという感じではありません。基本、救いのない暗いお話で、味方と思っていた祖母の変わりようが一層のもの悲しさを誘います。
小学生から中学生になる、ちょうど思春期を迎えようとする少年の苦悩がテーマなんでしょう。解きほぐすように丁寧に心情を綴っていきます。背徳であったり不道徳であったりする表現もありますが、深入りせず上手にオブラートに包んでいます。
終盤に訪れるハインの運命は哀しすぎるのですが、最後はスッと気持ちの整理が付く不思議な終わり方です。きっとハインの霊がそうさせるのでしょうね。ああでも幸子の謎が残ります。おもしろかったです。
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