読書感想文 『目眩する世界と笑うウエイトレス』 浅黄幻影(著)

 小さなレストランで働く気丈なウェイトレスに気弱な青年が恋をする。恋愛短編。


 男って制服女性に弱いよね、ということを最初に思いました。ウェイトレスのセルヴィアは、学生時代にドロップアウトした不良少女ですが、働いているときにはその気質を表に出しません。キリッと働いているセルヴィアに一目ぼれするのが青年ヴィンデルで、マジメな彼は甲斐甲斐しくも店に通いつめます。しかしその相手セルヴィアの中身は見た目と裏腹のアウトサイダーだったわけで、二人は普通のカップルとは違う関係になっていきます。このストーリーに挿入する形で、彼らがどうして付き合うようになったのか、セルヴィアがドロップアウトに至る過程、ヴィンデルがなぜ気弱なのか、などの解説が懇切丁寧になされます。講談師が解説をしながらお話を語るような、わたしはあまり読んだことのないタイプの小説でした。

 冒頭の「シメオンの目眩」とセルヴィアとヴィンテルに襲い掛かる目眩の本質は同じ、ということなんですが、いっそのこと二人に塔に登ってもらったら対比がわかりやすかったかもしれません。

 わたしはこの本を異端の女性と純朴な青年に向けた恋愛指南書と読みました。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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