読書感想文 『世の中には恵まれた人というのがいて、それがときどき、あたしをひどく追い詰める。 BOY'S STORIES』 川越ミナミ(著)

 テニスも勉強もできて、背も高くて鼻筋もスッと通ったイケメン窪川くんが、あたしを初詣に誘ってくれた、んだけど彼の目的はあたしの親友ナツミだったのね。窪川くんは後藤くんを連れてきて2対2の初詣。あたしと二人になった後藤くんは、あたしを恋敵だって言うの。表題作を含む恋愛短編集。


 キャラクター設定はほぼ同じでシチュエーションを変えた短編10集です。いずれも年頃の女子が主人公です。彼女たちは貧乏で、いろいろなコンプレックスを抱えています。それでも誰かを好きになって、うまくいかなくて、悲しくなって、立ち直っていく過程を描きます。彼女の傍らには必ず男子が寄り添うのですが、彼にも深い悩みがあって、それがゆえに彼と彼女はまさに友達以上恋人未満という不思議な関係を築いています。わたしはノーマルなので理解しがたいところもあるのですが、そんな異性との関係性は少し憧れるところもありました。

 文章は主人公の女の子が語る一人称で、今どき女子の話し言葉でテンション高く綴られます。貧乏だったりコンプレックスだったり失恋だったりも地中海の風のように明るく語られ悲壮感を決して見せないのですが、それがかえって彼女たちのどうしようもなく逃れられない運命を感じさて悲哀を誘います。不思議なものですね。暗いお話を暗く書くのは簡単ですが、明るさのなかに悲しさを表現するのは難しいのではないかと思います。ただそれによって読後感はとても良かったです。勉強になりました。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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