読書感想文 『妄州』 木村央志(著)
架空戦記を書く請負ライター星野のところに、新山朱音という妙齢の女性からアポイントメントがあった。彼女は50年前に惨殺された祖父 新山和斗のことを調べたいという。戦時中新聞記者だった彼は、戦後イタリア料理店を営んでいたが1968年に両手足を縛られ惨殺された。戦中戦後、彼は何かを調べていたらしく、それが殺される原因になったのではないかと朱音は考えていた。
新山和斗は殺されるまで何を追っていたのか、という謎を主軸に物語は展開していきます。山王ホテルから始まり、浅川地下壕、731部隊、ロマノフ王朝の隠し財産等々の史実に、消えた神社、新興宗教などの虚実を巧みに織り込んでいきます。主人公星野とともにわたしも謎に挑んでいるような、そんな気持ちで読み進めました。中盤、点だった手掛かりが線につながり始めたとき、わたしは巨大な獲物が掛かった細い糸を手繰っていくような興奮を感じながら読みました。まさにページをめくる手が止まらない、という感じです。
終盤に差し掛かり、これで謎が解ける! というところでなんと異世界の扉が開いてしまいます。この驚愕の展開は『黒い仏』(殊能将之 著)に似たところがあります。これは賛否あるでしょうね。わたし的には現実世界での謎解きで終わらせても良かったかなと、勝手に思いました。それでもたいへんおもしろかったです。
この本がデモンズゲートというゲームのスピンアウト、というのは読み終えてから知りました(笑)。作者の方はゲームの監督さんとのこと。ベースを知っているファンの方なら、この本の最後の展開もうなずけるのでしょうね。わたしもデモンズゲートに興味が湧いてきました。
わたしはkindle版をダウンロードして読んだのですが、今はkindle版は取り下げられたようです。公式HPでepub版をダウンロードすることができますので、ぜひ。
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