読書感想文 『駆け出しミステリー作家と星名真琴の襲名披露』 和泉 綾透(著)

 新入生 鈴木由美は、容姿ばかりか名前までありふれているのにも関わらずラノベの名作『ブギーポップ』の登場人物「霧間凪」の格好――つまりかなり目立つ変な格好でキャンパスにいた。駆け出しミステリー作家 都並大祐(僕)は直感で彼女には「殺される価値」があると見定め、今回の死体役に抜擢する。シリーズ第7弾!


 序盤、主人公が自分の書いた小説の映像化を夢想するシーンがあって、自分が書く小説世界と実写化されたもののギャップを今から心配するという捕らぬ狸の皮算用的な想像に、あーあるあると思いました(笑)。このような雑話を交え、展開は行ったり来たりしつつ、ストーリーは進んでいきます。

 今回は主人公 都並大祐が彼を取り巻く女性たちの彼に対する反応を鏡にして自身のパーソナリティを明らかにしていくミステリだと読みました。彼は突然、自分が身の丈を超える活動をしていたことを悟りました。ポジティブな活動が精神を疲弊させ疲労破壊に至る……これは共感する人が多いのではないでしょうか。

 相変わらず饒舌でユーモラスな語り口でサクッと読ませるのに、雲を掴むような捉えどころのない読後感でお話の内容がポッカリ抜け落ちるような独特な感じです。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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