読書感想文 『ヴィーヴルの眼』 水谷悠歩(著)

 クラスメイトの仁科が突然入院した。級長の宇佐美は病院にお見舞いに行くが、そこにいた刑事から彼女は暴行され意識不明になったと聞く。生徒会長の要望で暴行事件を調べ始めた彼と幼馴染の千奈津は連続殺人事件に巻き込まれていく。


 高校生が殺人事件を調べるなんてなかなか現実には起こり得ないわけですが、本作では学校を舞台に生徒会や先生からの依頼で事件に巻き込まれるという自然な設定とすることで上手に現実味を出しています。警察を出し抜くといいうこともなく、あくまで高校生のできる範囲で調査を進めていくのですが、それがかえって真相に徐々に近づいていくという感じで、わたしはいつの間にか次へ次へとページを手繰っていました。

 わたし個人的にはエピローグはあっさり締めて余韻を残すのが好みなのですが、本作は終盤からがむしろ本番と言わんばかりに長いです。真犯人が判明し○○してしまった後のエピソードから一気に真相が開示されていきます。オカルティックな事象を脳科学で裏付け、連続殺人事件の裏に潜む謎を明らかにします。それまで無口だった子がいきなり饒舌に語り始めるのは少し違和感がありましたが、彼女の語る脳科学の件《くだり》はたいへん興味深く読みました。「種の記憶」は『元型論』(ユング)に通じるものがあると感じましたし、いわゆるアカシックレコードとも説明できるなと思いました。

 ミステリにオカルト(異能)のスパイスがピリリと効いたクライムサスペンスでした。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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