読書感想文 『ティム・アンカーソンの弟』 比恋乃(著)

 新米警官マクウェルは、港付近で銃を持った少年二人を撃った。少年の一人ティムは、実の父親を撃ち殺し、弟と逃げている最中だったのだ。短編。


 悲しい物語です。最初に銃撃戦があって、その結果一人の少年が命を落とします。生き残ったティムを警官キャロルが聴取するのですが、回想しながら話すティムの話しはとても悲しいものでした。簡単にまとめると父親のキースがクズなのでティムは殺して逃げるしかなかったというお話なのですが、ティムの証言は虐げられていた人間の辛さを感じさせるもので胸が締め付けられました。

 最初に事件と犯人もわかっていて、その原因は証言で明らかになっていくという倒叙型のストーリーです。短編でありながら重厚なテーマと丁寧に描写される心情に苦しくなって一気に読めず、じっくりと取り組みました。

 悲しい最期ですが、その後を考えると憎しみの連鎖を断つことができたティムはむしろ救われたのかもしれないと思いました。こころにズシンと響く本でした。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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