読書感想文 『スノー・グレイ 恐羅漢山大量殺人事件』 乙野二郎(著)

 吹雪の晴れた恐羅漢山の山荘に着陸したヘリ。山岳救助の隊員が山荘で見たのは、惨劇の跡だった。生存者一人(北山徹)を救助した後、山の天候が急変する。結局雪崩によって山荘は流され、同時に現場も消えてしまった。証拠が極端に少ないなか、北山の刑事裁判が始まる。


 吹雪に閉ざされた雪山の山荘というミステリでは常道のクローズドサークルものです。ただ名探偵が犯人を追い詰めて解決するわけではありません。この本は、犯人と目される生存者(北山)を状況証拠だけで裁判にかけるという法廷ものです。誰が犯人なのか、真相は何なのか、それは読者の想像に委ねられる形ですので、読後はモヤッとしました。ですが、これが現実の法廷なのでしょうね。裁判官や裁判員はこういう限られた情報で有罪・無罪を判断しないといけないんだと想像すると、これは苦しいなと思いました。合わせて、普段何気なく見ている新聞やテレビの報道、ネットの論調などは、当事者ではない無責任な情報なのだなと新ためて感じました。

 あまり読んだことのない構成で目新しく、ストーリーもおもしろかったです。ちなみにはわたしは無罪にしました(笑)。


 ロケーション1680付近の被告人の言葉で「なにか物音がしなかったみたいことを」となっていましたが、これは「~みたいなこと~」なのではいかと。細かくてすみません。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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