読書感想文 『サイレントサード』 八槻 翔(著)
詐欺師のアメミヤレイジのところに凛々香という女が転がりこんできた。彼女は自分も詐欺師にしろと要求する。アメミヤはうざいなと思いながら彼女に応じているうちに情が移っていく。一方、世間では犬の首を落とすという猟奇事件が起こっていた。
主人公アメミヤは、脇が甘かったり、読みが浅かったり、感情的になったりで、詐欺師とは思えないくらい何度も窮地に陥ります。彼は決して二流ではない詐欺師なのですが、それでも彼の窮状を見ると詐欺師って割に合わない商売だなと思いました。ターゲットの信用を得るための経費(身だしなみやアジトや情報収集など)が結構掛かるわりに、実入りは少ないし、最悪の場合御用になる可能性もあります。それにもまして一番のデメリットは罪悪感に苛《さいな》まれることでしょう。アメミヤも罪悪感に動かされて破滅に向かって行ってしまいました。そういう意味でもアメミヤは一流ではなかった、のかもしれません。
中盤までアメミヤと凛々香のテンポの良い掛け合い、詐欺の手口と心理学的解説が楽しくて、これはもしかしてシリーズ化?と期待していたのですが、最後は何度もどんでん返しがあって、結局バッドエンドでした。あとがきで作者もこの作品は「嫌ミス」だと書かれているように救いのないラストでしたが、思ったより読後感は悪くなかったです。最後に全てきれいに謎解きされたからでしょうね。たいへんおもしろかったです。
黒幕が最後に殺しをやってしまうところが唯一残念で、そこは一流詐欺師として殺したように騙してほしかったなと思いました。
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