読書感想文 『殺人鬼・平井権八 (新歴史観ブックス)』 口冊司(著)

 江戸時代初期、殺人鬼と呼ばれた浪人がいた。平井権八。彼は、吉原の小紫という花魁に入れあげ、困窮する。金のために人を殺し続けた男に救いはあるのか?


 現実にいた大量殺人鬼をベースにした歴史小説です。130人を殺したとされる平井権八、知りませんでした。この本を読んだ後に調べてみると、確かに史実を元にしたお話なんだな、と思いました。点と点である史実を想像力で結んで線にして、筋の通ったストーリーにしています。物語の主軸は男と女の悲恋ですがあっさり風味です。どちらかというと、平井権八の異常な精神状態や残虐性を生々しく描写していて身の毛がよだつシーンが多かったように思います。また、殺されるほうの悲哀もしっかり書かれていて、画一的ではない姿勢に好感を持ちました。

 殺人鬼に救いはない。しかし死んだあとは誰も平等に仏である。最後は日本的死生観を感じることができ、良い読後感でした。

 中編であっという間に読んでしまいました。おもしろかったです。

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