読書感想文 『ロボット、宇宙人、悪魔のでる短編集』 地球まるい(著)
私(流山)はフリーランスの声優である。担当マネージャのオードリーから紹介される仕事は変わっていることが多い。四年前には年老いた母親に自分に代わって電話してほしいという息子の依頼もあった。今回は生前葬でのスピーチの依頼である。果たして今回の依頼は是非やりたいと思える仕事だろうか。(『流れの声優―生前葬―』『流れの声優―オレオレ詐欺―』)
この本は七つの短編から成りますが、いずれも趣《おもむき》がバラバラのお話でジャンル分けが難しいです(笑)。一つのお話は長くもなく短すぎることもなく、空き時間にサクッと読める分量です。軽やかな筆致で読みやすいです。どれもおもしろいのですが、全部をまとめた感想を書くのは難しいのでそれぞれのお話で感想を書きます。
『わたしは5分後に発狂します』
言葉が精神を支配するのか、精神が言葉を欲するのか、という高尚なストーリーと思わせておいてのオチがクスリと笑わせてくれました。
『満月の夜の悪魔』
願いが叶う代わりに悪魔に魂を取られるというスタンダードな設定です。その他の似たようなお話との差別化のためには、「願い」でどこまで悪魔を出し抜けるか、というのがポイントになるのですが、このお話の願いは「出し抜く」を超えた普遍的な愛でした。拍子抜けしましたが、これはこれでハッピーエンドなのかなと思いました。
『宇宙外交官と、セクシーなアンドロイド』
地球外生命との外交とアンドロイドとのラブストーリーを絡めたまじめなSFで、どう物語を畳むのだろうと思いながら読みました。最後は言葉の意味の違いを笑いに変えるという王道展開で終わってしまいました。シリアスで締めても良かったかなと思いました。
『流れの声優―生前葬―』
『流れの声優―オレオレ詐欺―』
おもしろかったです。依頼者の人生を声優が声を使って救っていく、という目新しい設定です。お話もおちゃらけはなく、深い人生ドラマになっています。もっと他のお話を読んでみたい! と思いました。
『人間が、自動運転になったら』
人間が自動運転化するとどうなるかというSF設定が秀逸。技術的にはまだまだ難しいと思いますが、思考実験としてはとても興味が湧くテーマですね。これぞSF短編!
『ロボットに仕事を奪われた人たち』
ロボットに奪われた仕事を取り戻すために会議をする人たち。皮肉がきいたラストでした。軽い感じですが、近未来では現実にあり得そうだなと思いました。
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