読書感想文 『CODE R.I.P. 1 Rest in Peace』 杉浦絵里衣(著)
風も凍てつく一月、公園の池で若い女性の他殺体が見つかった。被害者は河本彩32歳。最重要参考人となったのは捜査一課の刑事である羽柴秀明。彼は被害者と最後に接触していたとされた。彼のバディである見習い女刑事 藤井祐希は、自宅待機を命ぜられた彼とともに事件の真相に迫ろうとするが……彼女は羽柴の嫌疑を晴らすことができるのか!?
男女バディの刑事もの小説です。前半の半分は、殺人事件を追うサスペンスで、後半はいくつかの連作短編がつながっています。いずれもミステリ・サスペンス要素は薄めで、どちらかというと捜査一課を舞台にした恋愛模様が物語の主軸になっています。
前半のサスペンスは犯行時の犯人の心情や手口があらかじめ明かされる倒叙型になっており、動きが取れない羽柴とまだ新人の藤井がどうやって犯人を追い詰めていくかが見所です。羽柴を信じて疑惑を晴らそうと奮闘する藤井のがんばりが眩しい! 時折、彼らの過去がフラッシュバックし、物語に厚みを持たせています。何があったの? とヤキモキしながら読みました。ガチガチのミステリではありませんので手口やトリックはあっさりでこれならすぐに犯人は露呈するんだろう、と思ってましたがなかなかそう展開せず、思い込みによる恣意的な捜査が行われてしまうという怖さを何度も訴え掛けてくるのでそれがテーマなんでしょうね。
三人称の地の文の中に頻繁に登場人物の心情が挟まれるタイプの文体なので視点変化についていくのが大変なのですが、心情を細やかに読者に伝えてくれますので感情移入しやすかったです。連続テレビドラマを観ているようでした。テレビドラマ的には二人はつかず離れずを繰り返してシリーズを引っ張ったほうがいいのでしょうが、その点はこの作品だけで決着がつくのでスッキリして良かったです。また登場人物に心底のワルもいなくて、わたしの精神衛生上も良かったです(笑)。おもしろかったです。
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