読書感想文 『九機の虎』 赤沢 一矢(著)

 十六年前に同棲した彼女 倉田小夜子が失踪した。黒バイ(覆面白バイ)隊員 大賀は公安部の中川とともにかつての恋人の行方を追う。その背後には政界をも巻き込んだ陰謀が渦巻いていた。


 まず感じたのが、バイクが生き生きと書かれているということ。わたし自身もかつてバイク乗りだったので読んでいてエンジンの鼓動やヘルメットの風切り音を懐かしく思い出しました。

 第一部では失踪事件と麻薬捜査の表層をなぞるように進んでいきます。なんとAmazon紹介ページには第一部のあらすじが結末まで書いてありますので先に見ないことをお勧めします(笑)。第一部では時折このシーンはなんだろうという違和感がありますが、それは第二部で明らかになります。第二部では、過去と現在を行ったり来たりしながら事件の裏側で進んでいた陰謀を種明かししていきます。第一部は主人公目線、第二部は読者目線のストーリーとすることで、主人公も知り得ない物語の裏側を読者に明かしていくといううまい構成になっています。

 大賀はかつての恋人の娘(女子高生)を保護するため彼女と同居し始めますが、初めて会う娘に対する妙に気まずい心情が良く書かれていて読んでいるこちらもドギマギしながら読みました。おもしろかったです。


 最近の本には会話の掛け合いで軽口を言い合うシーンがよくあります。この本にもありました。現実にはそういう言い合いは普通にあるのでしょうけど、わたしはそういうシーンを読むと白けるというかしっくりこないのです。みなさんはどうでしょうか?

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