読書感想文 『少年よ、塵の中で躍れ』 永坂暖日(著)

 小惑星の衝突、火山噴火などの自然災害が立て続けに起こり、地上は有毒な塵に覆われた死の世界となった。地上を追われた人類は生きる世界を地下に求め、人々は各地に地下都市を作って暮らし始めた。地上に出るのは空調設備の整備士くらいだった。あるとき整備士の秋香は地上を彷徨う少年を発見する。彼は別の地下都市から逃げてきたという。


 冒頭、地上での戦闘シーンからスタートします。人類が戦っている敵は誰なのかという謎と、緊迫したシーンをうまく使って興味を引きます。敵の正体は分子機械(マイクロマシンですね)なのですが、ストーリー上はあまり前面に出てきませんでした。どちらかというとこの設定の下での人々の暮らしや人間関係を主軸に物語が展開していきます。鬱展開が続きますので読んでいて気持ちが滅入りがちになりますが、時折見せる人のやさしさに救われて読み続けました。希望の見えるラストになって読後感は良かったです。

 地上が死の世界になった理由や、地下都市の構造などはしっかり考えられていて、SFらしく骨組みがしっかりしているなと思いました。それらの設定もストーリーの進度に応じてうるさくない程度にうまくインプットしてくれますので、本筋に集中して読むことができました。文章は、落ち着いた文体で読みやすく、地の文に心情・感情がしっかり書かれますのでわかりやすかったです。おもしろかったです。

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