読書感想文 『フィルター 短編小説』 八槻 翔(著)
パチンコ店アルバイト野崎は、ガスも止められ食うや食わずの生活をしていた。それもこれもパチンコ依存症のせいだ。そんなとき野崎は人気のない道端で一万円札を拾う。誰もいない。野崎はこれ幸いとネコババを企てる。
前半から中盤にかけて人情モノかと思いきや、後半からミステリ仕立てになっていく短編小説です。最初に出会った老人が最後に重要人物になるだろうとなんとなく予感はありましたが、予想と違った結末で少し驚きました。わたしはてっきり老人が天使になるのかなとファンタジー設定を想像していました(笑)。
パチンコ依存症で人生を棒に振った人物が主人公(野崎)で、妻には愛想をつかされ、幼い娘にも会えず、借金もあって貧乏のどん底からスタートします。野崎はそれでもまだパチンコに執着して、もう治らないと諦めているダメ人間です。そんな彼が妻と娘に出会って少しづつ心境が変化していくのが前半から中盤のストーリーです。わたしはその路線で最後まで書き切るのかな、と思ってました。むしろ期待していました。なので終盤でパチンコ狂いの彼が探偵ばりの推理で種明かししていく展開に少し違和感が残りました。
文章は三人称ですが、ずっと主人公目線で進みますのでいっそのこと彼の一人称で書いたらもっと内容に馴染むかなと思いました。そのほうが彼の心情も地の文に書きやすいかなと。
どうやらもう出版されていないようです。次の短編集に収録されるのかな。期待してます。
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