読書感想文 『Sight of You(分冊版) 1 / WHITEOUT』 簏崎史哉(トシザキフミヤ)(著)

 北海道の支社に転勤となった小山は、職場の不穏な雰囲気に気づく。その支社の動きを密かに探り始めた小山は、元上司の大木に詳細な状況報告メールを送っていた。彼のメールの内容は徐々に辻褄が合わなくなり、ついに暴走する。


 第1章はコンピュータエンジニア小山と元上司の大木のメールのやり取りでストーリーが展開する目新しい構成です。日々の仕事の裏に隠れた陰謀の匂いを嗅ぎつけた小山が、それを探るうちに徐々に壊れていく様子を小山自身の目線から語るという、とても魅力的なストーリー展開で、グイっと引き込まれて読みました。メールにいろいろ書きすぎなんじゃ……とも思いましたが、これもある理由によるもので、モゴモゴ。

 第2章はコンピュータに意識が分散してしまった小山をサルベージする後輩の奮闘に変わります。こちらはオーソドックスな小説作法に沿った構成です。この章ではネットワーク技術(ピアツーピア)と人間の意識の融合という技術的モチーフが明らかになります。小山の意識が分散したコンピュータネットワークに意識を接続した後輩は、行動プログラムやハッキング攻撃というネットワーク上のプロトコルを、現実感をもった出来事として見ることになります。この表現が良く考えられていて筆が達者だなあと感心しました。あまり感想を書くとネタバレになりそうなのが残念です(笑)。

 この本ではテロの全容などははっきりしませんが、それは続巻で明らかになるのでしょう。おもしろかったです。続きを読もうと思いました。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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