読書感想文 『これからの祈りについて』 斧田小夜 (著)

 野良化したセムトケ型ロボットたちは北の大地にコロニーを作って住んでいた。そのすぐそばにはロボクシと呼ばれる監視基地があった。監視対象は、セムトケである。


 セムトケ型ロボットの調査のためセムトケの活動時間が短くなる冬季を狙ってセムトケを狩る人々の営み、というのが大まかな筋です。人間と機械の間には決して理解し合えることのない大きな隔たりがあって、人間はセムトケを理解するために狩り、一方のセムトケは人間から興味を持たれていること喜びそれに応えようとしますが、お互いの努力は双曲線と同じで近づけば近づくほどその距離は遠くなっていきます。古くより人間は理解の及ばない対象を神格化していく自然観・宗教観がありますが、それを人間対機械で表現しようとしているんでしょう。深いテーマです。読み始めてすぐ『ゴールデンカムイ』が思い浮かんだのでなんでだろうと思いましたが、読み終わってああなるほどと感心しました。

 感情の抑制された文章で淡々と書かれていますが、すごく考えられた繊細な文章だと思います。わたしの目の前には厳しい北国の情景がぶわっと広がってました。とても濃い短編でした。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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