読書感想文 『エンジェル』 如月恭介(著)
致死率100%の奇病が世界中に蔓延し、人類は存亡の危機にあった。科学者たちは病気の原因を追究する中で遺伝子と神話の関係に気付き驚愕する。この奇病は神々によって仕組まれた罠だったのか。人類の存亡をかけた戦いが始まる。
新型コロナ肺炎が世界中で猛威を振るっているおり、とても興味深くこの本を読みました。序盤はあまり病気のことに触れられず、どんな話なんだろう?ストリッパーの話かなと思いながら読んでいきましたが、中盤から一気に緊迫感が高まってきて終盤には人類存亡を賭けたスケールの大きいストーリーに成長します。致死率100%という奇病が世界中で同時多発的に大量発生し、しかも治療法が見つからないという状況におかれた社会はどのように変わっていくのか(どう変えていったらよいのか)、というシミュレーションがこの本の主題なんだなと思いました。よくあるのは、絶望からくる衝動によって暴力が支配する世紀末的社会に移行していくという世界観ですが、この本では個々人の強い想いが社会に伝搬し社会全体の行動を変容させていくという希望に満ちたものでした。今まさに世界で起こりつつある新型コロナ肺炎による絶望との戦いに希望を見出せる気がしました。
遺伝子と神話を結び付けたストーリー展開で、知的好奇心をビンビンと刺激されながら読み進めました。作者はきっと生化学と神話の双方に造詣が深いのでしょう。あとウィスキーについてもウンチクがさりげなく差し込まれて、こちらも詳しいんだろうなと思いました(笑)。おもしろかったです。
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