読書感想文 『オンザロック』 佐田 おさだ(著)

 両親が離婚した。小学生の京介は母親に引き取られた。母親は父親ではない知らない男と楽しそうに車に乗っていた。それを見た京介は気持ち悪くなって吐いた。吐き続けた。


 小学生の主人公が、女に戻った母親を見てその気持ち悪さに吐いてしまう、という若干重めの小説です。思春期に片足を突っ込んだ年代の子どもが身近な大人を見て気持ち悪く感じる、という誰しも経験した感情をうまく表現していて、わたしも子どもだったころを思い出してしまいました。きっと子どもは、大人の狡さ、理不尽さ、いやらしさ、などの生々しいところを見てしまうことで、自分が成長した先に待っている大人の世界に絶望するんでしょうね。それをこの本では気持ち悪くなると表現していました。わたしも確かにそんなことを子どものときに感じていた気がします。その気持ち悪さに潰されてしまうのではなく、友とともに乗り越えていくという前向きなストーリーで救われました。子どもが大人になるための通過儀礼みたいなできごとを丁寧に書いた小説でした。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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