読書感想文 『逃げの小五郎』 口冊司(著)

 明治維新三傑の一人、木戸孝允。彼がまだ桂小五郎だった幕末のころ、彼は逃げの小五郎と蔑まれていた。その理由と彼の思いを描き出す。中編。


 冒頭、維新の三傑、西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允と、幕末時の思想についての解説をしてくれます。事前に時代背景を頭に入れることができますので、そのあとに始まる物語にスッと入り込めました。

 ちなみに、本作の主人公 木戸孝允(桂小五郎)に対するわたしのイメージは、三傑の西郷隆盛、大久保利通に比べると少し地味だったのですが、これはきっと司馬遼太郎の『飛ぶが如く』のせいでしょう(笑)。わたしのこれまでの桂小五郎のイメージは秀才で切れ者なんだけど線が細いというもので、彼がなんで長州藩のトップだったんだろうとずっと思っていました(あまり幕末に詳しくなくてすみません……)。実は天下にとどろく剣豪だったとか、逃げの小五郎というあまりありがたくないあだ名があったとか、本作ではじめて知ることが多くありました。

 本作は史実をベースにフィクションによってその人物像を浮かび上がらせるというまさに歴史小説のかたちに沿ったものでした。わたしも本作に描かれる等身大の桂小五郎に親近感を覚えましたし、その強い想いに共感しました。おもしろかったです。わたしも自分なりに桂小五郎を少し調べてみようかな。

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