読書感想文 『宇佐見警部補の難儀な事件』 めきし粉(著)

 宇佐見数馬警部補は、政財界のフィクサーといわれる老人に呼び出され、『ひとみみず』を探せと強要される。宇佐見は警察時代の人脈を頼りに調査を始めたが、虚実入り乱れた情報に翻弄され、なかなか『ひとみみず』の実態に辿り着くことができない。『ひとみみず』とは一体何か?


 本作は、実際にあった有名な『プチ〇ンジェル事件』を下敷きにした長編ミステリ小説になります。『プチ〇ンジェル』もそうですが、同じような事件の米国『エプ〇タイン事件』も、全容解明の前に首謀者が死亡(自殺ということになっていますが……)していることで、不都合な情報が漏れないように消されたのではないかみたいな陰謀論的な怖さがあって、一般的にあまり触れられていないかもですね。あと都市伝説好きとしては『MK〇ルトラ』が出てきたのがうれしかったです(笑)。マッキンのアンプとJBLのスピーカーも少し出てきて、4311を使っている自分としてはいい趣味だなあと思いました。マッキンの青いイルミネーションは憧れましたねえ。

 あまり内容を書くとネタバレになってしまいそうなので感想だけ。宇佐見警部補のカッコイイシーンの印象が残らないくらい情報提供屋の二人が優秀すぎて(からくりもあるわけですが)、結局、宇佐見警部補は痴話騒動しかしていないのではないかという読後感でした(笑)。

 さて本作の紹介欄には、江戸川乱歩賞の2次選考で『不運というべきだが』といって最終選考に進めなかったとあります。おそらく本作は、『セルパブ!夏の100冊2020』のコラムで作者の方が書かれていた作品ではないかと思います。作者渾身のアイデアと同じような内容の他作品が、なぜか同じタイミングで同賞に応募があったということ。そのアイデアというものが何か、わたしにはわかりませんが、怖いですね。

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