三世留男

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セルパブ100冊、読んでみて

 昨年5月から読み始めたセルフパブリッシング(略称セルパブ)本、先日ついに100冊読み切りました。9ヵ月で100冊なので、だいたい3日に1冊読んでいた計算になります。大仰な数字にも見えますが、読んでいた本人としては苦労したわけでもなく、むしろ楽しくてあっという間でした。前半50冊の感想は『セルパブ1棚目』として出版済みですので、後半50冊もまとめて『セルパブ2棚目』として出版しようと思います。 100冊は一応「先入観を廃し、自らのセンスのみを頼りとする」という考えで選びました。振り返ってみると、SFとミステリを多く読んだなあと。わたしの好みが反映されていることが良くわかります。 一目見て好みを判断できるマンガに比べ、小説などのテキストは読むまでおもしろさがわかりません。それが小説の良いところでもある(思ってもみなかった新たな出会いがある)のですが、時間のない現代人にとっては敬遠する原因でもあります。おもしろそうな本を選ぶための助けになればと思ってセルパブ本の感想を書いてきましたが、その結果わかったことは、今回紹介したセルパブ本のクオリティはほとんど商業本と変わらないということ。作者が好き勝手書いている分だけ、商業本よりもおもしろいことすらあるとわたしは思います。こうなると、商業本のプロダクトとしての価値ってなんだろうと考えてしまいます。 とかなんとか余計なことは考えずに、本当はやることをやらないといけません。エピソード3は出版しないといけないですし(もうほぼできている)、エピソード6は書き進めないといけません。それなのに『セルパブ2棚目』のあとがきに何を書こうかとグズグズしています。いつものようにササっと書けないのは、本業のストレスが大きいからかな?(と仕事のせいにしてみる) 今週は出張が多いので、来週くらいを目標に『セルパブ2棚目』出版できるようにがんばります。 以上、ひどいな。なんの中身もない文章ですよ。

読書感想文 『エレファントトーク』 藤崎 ほつま(著)

 目覚めるとオレはスマートフォンになっていた。状況がイマイチわからないが、持ち主の女子高生が援助交際をしようとしていることはわかった。嫌々なのが伝わってくる。できることは……電話を鳴らして気付かせるしかない! その女子高生は妹のマリエだった。オレは妹とともに、オレ自身の過去を辿り、事件に巻き込まれていく。 スマートフォンに転生するという発想が奇抜です。しかもただのファンタジーに終わらせず、終盤に理屈付けするところに作者の矜持を感じました。 マリエは友達を助けるために事件に巻き込まれていきます。一方スマホであるミカツグは、すぐ傍にいるのに傍観者でしかない状況。マリエの危機にも手出しができないもどかしさが良く伝わってきました。ミカツグは事態を打破するために自分の友人関係を駆使するわけですが、それは生前に積み上げた信頼関係に依存する砂上の楼閣のようなもの。ミカツグがいいヤツで、みなの信頼が厚くて良かったです(笑)。 シスコン・ブラコン気味の兄妹なのは家庭環境に遠因もあることを匂わせますが、深く突っ込まないところは好みな感じです。ラストに至るまでミカツグの想いは明らかにならないのですが、ほのかに感じさせることでせつない余韻が漂ってきました。 文章は、主人公 四条ミカツグを通して見た世界を丁寧に描く一人称です。スマホから見るという特殊な視点なわけですから、スマホがポケットに入ると視界がなくなるなど、書く時の苦労が偲ばれます。ただミカツグの語り(地の文)に作者の知的レベルがにじみ出ているように感じて、自分が大学生のときはこんな言葉使って考えたかな、と少し違和感が残りました。まあミカツグはK大生だから優秀なのかもしれません。こういったところは難しいですね。 読みやすくて一気に読みました。おもしろかったです。サンプルだけではその後の事件や両者の想いはほとんど伝わってきません(わたしもしばらくサンプルだけで止まってました)ので、ぜひ最後まで読んでほしいですね。

読書感想文 『どんな気持ち』 孤独堂(著)

 僕は面識のなかった隣のクラスの女子 野上弥生に一目惚れした。そのときの成行きで、僕の親友の大山俊介と野上弥生の友達の藤崎ほのかとグループ交際することになる。野上弥生は人目を惹く美人だけど根暗で、しかもとんでもない思想を持っていた。僕は彼女のその考えを変えようと四苦八苦するうち、自分が奇妙な世界に入り込んでいることを知る。 年頃の少年少女が抱く性への興味と恐怖を主題に置いてSFやスピリチュアルの味付けをした、高校生同士のピュアなラブストーリーです。 ヒロインの野上弥生は特異な思想(宗教)の下で育ち、神の存在を信じ切っています。さらにセックスに対しても常識では受け入れがたい考えも持っています。この教義が彼と彼女を悩ますきっかけになるという重めのメインストーリーです。ただ、第一巻は行間を頻繁に開ける今どきの体裁で軽快に読み進められます。同時にストーリーに引き込まれていきます。 第二巻では、彼と彼女がセックスについて侃侃諤諤《かんかんがくがく》の議論を重ねます。ここが見所だと思いました。果たして愛とセックスはイコールなのか? 好きな人以外にも欲情してしまうのに、好きな人にはそうであってほしくないというのは都合の良い考えなのか? 好きな人以外と快楽のためにセックスすることは悪なのか? 平行線の議論の理由は第三巻で明かされます。 第三巻では、どこからが夢でどこからが現実かわからなくなる展開になります。その夢を夢と認識しているところ(いわゆる明晰夢)は、拙著『ダイバーダウンの世界』に似ているところがあるなと思いました。拙著のほうは明晰夢の活用にフォーカスしていますが、この本では場面転換の手法として使っています。意識の中に別の独立した意識が生まれ、その助けによって彼女は救われます。ただしこれは彼にとって都合の良い救済かもしれません。何を言っているのかわからないかもしれませんが、最後まで読むと意味がわかると思います。深いです。 全編を通して、主人公の男子(敢えて名前を書きません)の性に対する悶々とした葛藤が良く書かれています。 性の問題を取り上げてはいますが、重くなりすぎず、アダルトに偏ることなく、軽いエロスの青春ファンタジーでした。おもしろかったです。

読書感想文 『タイヨウのシズク』 渡辺 迷子(著)

 熱中することもなく夢もなく、ただ無気力に過ごす青年 和田友貴は、彼女に愛想をつかされ落ち込んでいた。未練たらたらの友貴は、傷心旅行に出かけた香港で彼女そっくりのぼったくり商人の女 婉華に惹かれ、彼女とデートするために人さらいをすることになる。 香港といえばスタイリッシュなイメージがありましたが、この本ではその裏にあるダークな部分まで良く書かれていて感心しました。なるほど、作者は香港に住んでいたのですね。 主人公の友貴は、何事にもやる気がなく仕事も転々とする若者です。そんな彼にも彼女がいますが、愛想をつかして別れます。当たり前です。というのが序盤の展開です。フラれた後、かつて住んでいた香港に傷心旅行に出かけてぼったくり商人の女にわざと引っ掛かるところからおもしろくなってきます。そして中盤から、友貴は香港の闇の世界に足を踏み入れていきます。わかりやすいありがちな展開なのですが、場所が香港という異国の地であることと魅力的な登場人物によってかえって新鮮に感じました。 友貴は香港の闇世界(九龍城砦)に絡み取られ、成行きで日本語教師になります。このへんは『ショーシャンクの空に』を思い出しました。ラストは予想していた通りではありましたが、春風を感じるような気持ちの良い締めでした。『JIN-仁-』(テレビドラマのほう)を思い出しました。映画とかドラマばかり思い出してすみません。 文章は修辞を凝らした骨太なものですが、わりあい読みやすかったです。 わたしはこの本を、主人公が教師の経験を経てレゾンデートルを深く考えていくという成長譚として読みました。たいへんおもしろかったです。

読書感想文 『夢の人』 植田シキ(著)

 寝ている時に好きな夢を見られるドリームメーカーに「夢の人」というタイトルが追加された。「夢の人」は瞬く間に話題になり、その夢から抜け出せなくなる中毒者が続出する。「夢の人」は、サヤという女性と恋愛を楽しむ夢だった。 現実世界で満たされない思いをせめて夢の中だけでもと願う人は大勢いるでしょう。その夢を叶えるマシンが本作におけるドリームメーカーになります。ドリームメーカーと同じように夢を自在にコントロールできる能力があります。それが明晰夢です。夢は思い通りにならないからおもしろい、わたしは最近そう思うようになってきましたが、以前は自分の願う通りの夢を見ようとがんばっていました。その手法こそ明晰夢でした。詳しくは拙著『思想物理学概論』を参照いただくとして、明晰夢で夢を操ることができれば、この本のドリームメーカーと同じことができるようになります。そしてドリームメーカーと同じくハマります。明晰夢中はおそらく脳内麻薬が分泌されるんでしょう、目覚めたときの多幸感は相当のものです。 さて本作は、ドリームメーカーの中でも「夢の人」という恋愛ソフトにハマる人々を巡る物語です。いずれも現実世界での鬱屈した思いを抱えていますが、夢の中でサヤさんに癒されることで多幸感を得ます。サヤさんとの出会いによって新たな目標を見つけて「夢の人」を卒業する人もいれば、ハマってそのまま眠り続ける人もいます。それは紙一重の差なんでしょうね。 夢も現実も同じ脳で処理する以上、人間にとっては夢も現実も同じだとわたしは考えています。わたしの個人的な意見ですが、眠り続けるということを選択したなら、それもその人の人生なんだろうと思います。問題は、眠り続けることが経済的に成立しないということだけだと思うのです。夢の世界で生きることも、SFの世界でよくあるサイバー空間に意識を移すことも、同じことだと思っています。 自由な夢を見られる電子機器の実現はまだまだ先になりそうですが、似たような技術であるVRが現実と同じくらいリアルになると、同じように中毒になる人が出るでしょうね。この本では、その怖さを煽るような否定的な内容ではなく、なぜそうなってしまうのかというこころの問題を描き出そうとしているように思いました。いろいろ考えることが多くありました。おもしろかったです。 なぜ「夢の人」がここまでの中毒性があるのか、というところがもっと技術的(空想でも)に突っ込んであったら最高でした。

読書感想文 『仮想現実世界: 崩壊する世界 』 海田陽介(著)

 井口直人は、子どもの頃より欲しいものが空中から現れるなどの不思議現象を体験していた。三上響子も同じような現象を体験し不思議に思っていた。二人は井口のブログを通じて知り合う。二人の出会いをきっかけに世界は真の姿を現す! いわゆるホログラフィック宇宙論をベースにした世界観のお話です。 今日のホログラフィック原理によると、我々は3次元の空間に住んでいるように見えるにもかかわらず、そのすべての情報は2次元の面に記録されているという。そして、万物の基本単位は物質やエネルギーではなく、情報であるとすらされる。情報は0と1のようなビットで表現され、宇宙はそのビットから作られていると主張する。つまり、宇宙はコンピュータのようなもので、その内部の情報が、我々が実体と考えているものを作り出しているのではないかと考えているのだ。(『思想物理学概論』より) 序盤は日常生活で起こった不思議な出来事に疑問を持つ二人の議論で進み、中盤から突然未来世界になります。内容紹介にあるように、コンピュータホログラム世界の深刻なエラーのお話に飛びます。終盤は、未来の世界と現代の世界がつながって盛り上がってきます。が、いいところで第1章(え?)が終わり、続きは次章になります。なんとこの本で完結しません。続きが気になるので、次章を探しましたがまだ出版されていないようです。 複雑な設定ですが、かなり細かく説明してくれますのでなんとか理解できました。続きをお待ちしております。

2019年の抱負などを

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 年末に振り返ることができるように、今年の予定を書いておきます。 1月。短編書く。エピソード3の出版。 2月。エピソード6の執筆開始。『わたしの本棚:セルパブ2棚目』を出版。 3月。ひたすら書く。エピソード4のPOD出版。 4月。ひたすら書く。 5月。ひたすら書く。 6月。エピソード6を完成させる。年初に書いた短編と一緒に出版。 7月。新シリーズを書き始める。 8月~12月。新シリーズの1作目をひたすら書く。あとはエンタングルメント・マインドシリーズのPODを全部完成させる。 今年はとにかくエンタングルメント・マインドシリーズを完結させなければなりません。残すところエピソード6だけになりました。このエピソード6を書きたくてその他のエピソードを積み上げてきましたので、早く書きたくて仕方ありません。科学哲学てんこ盛りの内容になりそうです。詳しくは『思想物理学概論』で(笑)。でもその前に短編(エンタングルメント・マインドシリーズのスピンオフ)を書きます。筆がノッている今のうちに書き上げておいて、エピソード6とともに出版しようと思っています。 年後半は新シリーズを書き始めたいです。探偵ものの長編になります。第3話までのネタがもう頭の中にはあって、こちらも早く書きたくてうずうずしております。 書きたい題材はいくらでもあるのですが時間が足りません。今年もまた睡眠時間を削る日々が続きそうです。本業も責任が増して忙しくなりそうなので、昨年までのように書ける時間が確保できるか不安なところです。 あとセルパブ本は時間を見つけて読み続けたいと思います。できるだけ多くの作家さんを見つけたいので、一回読んだ作家さんは後回しになりがちです。申し訳ございません。お気に入りの作家さんは何人もおりますので、そのつど新作は積んでいます。読むときが今から楽しみです。 そんなこんなで、今年もセルパブ界の陰で人知れず創作に励んでいくつもりです。よろしくお願いいたします。

2018年を総括してみます

 2018年も残すところあと一日。平成最後の大みそかを残すのみですね。わたしも恒例の大掃除も終わり、ほっと一息ついているところです。インターネットサーフィンすると今年を総括するブログが増えてきていますので、わたしも創作中心に今年を振り返ってみたいと思います。 1月。エピソード5を書いてました。 2月。エピソード5の初稿が上がりました。 3月。ホームページ作成にはまってました。特に人物相関図を作るのが楽しかったです。 4月。エピソード5をkindle出版。ホームページを公開すると同時にTwitter始めました。WITノベル選外で凹む。 5月。エピソード1のPOD作成開始。セルパブ本の読書感想文を書き始めました。 6月。エピソード3の執筆開始。 7月。エピソード1のPOD完成、出版。 8月。ひたすら執筆。 9月。ひたすら執筆。読書感想文をまとめた『わたしの本棚セルパブ1棚目』をkindle出版。 10月。ひたすら執筆。『このセルパブがすごい』に投票しました。 11月。エピソード2のPODを作成、出版。 12月。エピソード3の初稿が上がりました。 基本、書いてばっかりですね。仕事以外はほぼ執筆に費やしていた気がします。それでも筆は進まず、苦しい期間も長かったです。仕事の休憩時間はセルパブ本を読んでいましたので、セルパブに染まっていた一年でした。 結局、年初の「エンタングルメント・マインドシリーズを完結させる」という目標は未達でしたが、セルパブ本を90冊読めたのは自分にとって収穫でした。あと10冊読んだら『セルパブ2棚目』を出版できたらいいなと。紹介した本はおもしろいものばかりで、自分とのレベル差に正直凹むこともありましたが、自分の持ち味がなにかということを再確認できたとも思います。まあ、他人のセンスは真似できないので、自分を信じて書くしかないんだなと思い切れたということです。 あと、Twitterを通して同好のみなさまと知り合えたことも良かったです。執筆は孤独な作業ですが、同じように孤独と戦っている文士がそこかしこにいるという連帯感に随分と励まされた気がします。 あと一日、わたしは短編を書きたいと思います。エンタングルメント・マインドのスピンオフで、たぶんエピソード6が完成した後に公開することになるはずです。がんばるぞ。 それでは、良いお年を!

読書感想文 『神様とゆく!11泊12日小説を救うための読書の旅 』 弍杏(著)

 彼女の前に突如現れた、オバケのQ太郎のようなタコ型ウィンナー形状の未確認生物(UMA)は小説の神様だった。ヤツはこの世から小説を消すと宣言する。それを阻止するため、彼女はとびきりおもしろい小説を10冊紹介しなければならない! 主人公(作者)がドタバタ劇を交えながら軽妙な語り口でおすすめ本を紹介してくれる書評小説。そんなジャンルあるのかわかりませんが(笑)。紹介してくれる本は全部おもしろそうなので、機会を見つけてぜひ読みたいと思います。 読んでいて作者は本当に本が好きなんだろうなと感じました。紹介してくれる本への熱い想いが行間からも伝わってきて、わたしも大学生くらいまでは図書館や本屋に行くのに無上の喜びを感じていたことを思い出しました。今では……歳を取ったのかな。 冒頭の、最近おもしろい本がないという嘆きはきっとセルパブ界への𠮟咤激励なのでしょうね。そう受け取りました。「宝物みたいなきらきらした小説」を自分も書けたらいいなと。 江戸川乱歩は過去に大方読んだ気がするのですが、おすすめ三冊をまとめた小説(?)を読んでも全然思い出せず、こんなお話だっけ? と思いながらも、これはおもしろくなりそうと期待していたところに神様乱入で台無し、というのもおもしろい趣向でした。気に入った本にインスパイアされた小説ってもしかしたら新機軸になるのではないかと思いましたが、ここまで考えてはたと気づきました。この趣向は『Mash Up!』(隙間社様)ですでに形になっていますね。さすがです。 事前のイメージではもっとハイテンションかと構えていましたが、どちらかというと親しみがわく落ち着いた作風に感じました。なのでむしろシリアスなテーマが合うような気もします。 言い回しも楽しくて、「風邪でオブラートを使い切ったのでもう包めない」とか、「かわいいトラウマちゃんがエサのにおいをかぎつけて」など、自分にはないセンスがうらやましいです。 おもしろかったです。今後も期待しています。